ロストマーブルズ
 キノの前では少しは大人しくしていたが、ここからが聡の本性発揮といったところなのかもしれない。

 ジョーイも負けずと上から目線で聡を見つめる。

 背が低い分、聡は少し劣等感を感じたが、気を取り直して胸を張った。

「まあ、なんでもいいけどさ、キノは俺のもんだから」

「はっ?」

「だからあんたがキノと同じハーフでちょっとその、かっこいいかもしれないけど、それでも俺だって、早く大きくなってかっこよくなるんだから、負けないって事だよ。わかんないのかそれくらい」

 宣戦布告しているつもりだった。

 ガキの癖にませてたが、正直に気持ちを伝えるところは子供らしくて好感が持てた。

 ジョーイは長年切れていた喜怒哀楽のスイッチが入ったように、聡を見て笑ってしまった。

「なんで笑うんだよ」

「いや、俺もなんで笑ってしまったのか分からないくらいだ。信じないかも知れないけど、俺、普段笑わないんだぜ」

「そんなこと知るか。でもキノを取るなよ」

 はっきりと子供らしい意思表示に、ジョーイは益々微笑まずにはいられなかったが、返事は曖昧にしておいた。

「キノのことがそんなに好きなのか?」

「うん。大好き。でも今日はなんであんな眼鏡かけてるんだろう。普段は掛けてないのに」

「えっ? 眼鏡掛けてない?」
< 185 / 320 >

この作品をシェア

pagetop