ロストマーブルズ

「トニー、こんな時間までどこに行ってたんだ?」

 トニーはジョーイに目もくれないで、下を向きながら靴を脱いでいる。

 かなりもたついて、どこかふらつき加減で靴紐を解いていた。

 立ち上がって家に上がりこんだとたん、よたついて倒れこんだ。

 それをとっさにジョーイは受け止めたが、あまりの酒臭さに顔を背け、乱暴に突き放してしまった。

「トニー、酒飲んできたのか」

「ああ、ちょっと同郷の奴と知り合って仲良くなってな、ノリで飲んできたよ」

「おい、未成年だろうが。一体何が起こったんだよ」

「なんだか飲まなくっちゃやってられなくなったんだよ。家にいたらお前のお守りばかりさせられるからな」

「俺のお守りってなんだよ、それ。俺いつからお前にベビーシッターしてもらってたんだよ」

「この家に来たときからだろうが」

「トニー、いい加減にしろ。お前、かなり酔ってるな」

「ああ、酔ってて何が悪い。ジョーイはいいよな。皆から守られて大事にされて。俺なんて親も居ない孤児だぜ。子供の頃は学習障害(ディスレクシア)で文字も碌に読めなくてずっとバカ扱いだった」

「俺が守られて大事にされている? 何言ってんだ。それにトニーの過去のことは知らないが、今じゃ日本語ペラペラじゃないか。学校では人気者で友達も多いじゃないか」

「でも俺はジョーイのベビーシッターさ。腫れ物触るように付き合って、自分の意見も押し殺し、どこに行くこともできない俺の身にもなってくれ」

 主張するように訴えるが呂律が回っていない。
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