ロストマーブルズ
「おい、ジョーイ、さっきから黙り込んでどうしたんだ?」

「えっ、別に何でもない。ちょっと考え事をしてたんだ」
「あっ、そうか、今晩の夕食のことか」

 説明できるような話ではなかったので、ジョーイはそういうことにしておいたが、キノが気掛かりに視線を向けた。

 ジョーイもキノを見つめた。

「そういえば、ここでキノはビー玉をばら撒いたんだっけ」

「そ、そうね」

 恥かしいことなのか、気まずそうにキノは俯いた。

「あのビー玉の一つが、ずっと転がり続けてるんだ」

「えっ?」

「いつか、それを見つけられるだろうか……」

 その言葉の裏に秘めた思いを乗せ、ジョーイの瞳は真実を求めていた。

 深く問いかける瞳で見つめられ、キノの口許は微かに震えている。

 寸前まで声が出掛かっているのを、無理に押し込めているようだった。

「あー、腹減った。おい、ジョーイ、今晩何を食べる?」

 トニーの声にあっさり邪魔をされ、そして電車が入るアナウンスが流れると、全てがなかったことのようにされた。

 複雑な思いを抱え、ジョーイとキノは電車が入ってくる方向を無理して見つめていた。
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