ロストマーブルズ
「つまり、わざとそういうドジで冴えないふりをしてるんだ。それもキノの計算された行動だ。あの黒ぶちのメガネだって、普通年頃の女子高生があんなの掛けるか? まるで、ほらあれだ、あれ。クラーク・ケント!」

「それって、スーパーマンの仮の姿の? って、おい、キノはスーパーガールか? 彼女の目的はこの町の平和を守りに来たスーパーヒーローなのか?」

「そこまでいうつもりはなかったけど、何か訳があって地味に暮らしているはずが、目の前で事件が起こってしまってそれを無視できないために、最小限に目立たないように手助けしたんだよ」

「なかなか面白い話だけど、考えすぎなんじゃないか?」

「いや、そう考えればなんか辻褄が合うじゃないか」

「じゃあ、キノはなんでわざわざ目立たない地味な生活をしないといけないんだ?」

「それは……」

 ジョーイは自分なりに考える。

 あのビー玉がもし彼女の俺へのメッセージだったとしたら──
 ジョーイはどうしてもアスカがキノで、こっそりと自分の様子を見に戻ってきたと思えてきた。

 しかし根拠は何もない。
 ただの自分の思い込みに過ぎない。
 それをトニーに話そうとしても自分の過去のことを一から話す羽目になってしまう。
 それもできない。
 ジョーイは「うーん」と悶えるように目を閉じて悩みこんでいた。

「おい、なんか焦げ臭いぞ」

 トニーの一言で、ジョーイははっとする。
 ガスコンロを見れば黒い煙がボーボー出ていた。

「オーマイーガッ」

 ジョーイは走り慌てて火を止めた。
 ブスブスとフライパンの中は焦げ付き、中の物は真っ黒でいかにもまずそうだった。

 トニーも後ろから覗き込む。
 暫く沈黙が続いた。

「今日は外食しようか」

 ジョーイが苦笑いになると「グッドアイデア」とトニーは慰めるようにジョーイの肩を軽く叩いた。
< 92 / 320 >

この作品をシェア

pagetop