秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
「嘘……」
しかも諦めて帰ったと思っていた紳の姿まで見える。
私は慌てて部屋を飛び出し、階段を駆け下りた。
「悠里は俺の女だ。返してもらう」
「今更なにを言っているんだ。悠里が輝いて見えるとしたら、それは俺と一緒にいるからだ。女は隣にいる男で、輝きを変える。そんなこともわからないのか!」
伊吹さんがそう声を荒らげるのを見て、胸がキュンと締め付けられる。
彼はいつも、私を叱るときも淡々と抑揚なく叱るから、こんなに激高している姿を初めて目の当たりにした。
「伊吹さん!」
私が伊吹さんのところに駆け寄ると、彼は私の腰を抱いた。
私を力強く抱きとめる彼の大きな手から勇気をもらい、私は口を開いた。
「伊吹さんは、あなたに傷つけられて苦しかっただけの日常から救ってくれた」