秘書室室長がグイグイ迫ってきます!
やめて……。
伊吹さんの前で、そんなこと言わないで。
いたたまれなくなってうつむくと……。
――ドン。
すごく大きな音がしてハッとした。
「なにするんだ!」
すると紳が倒れ込んで、左頬を手で押さえている。
伊吹さんが、殴った、の?
決定的瞬間を見ていなかったけれど、おそらくそうだ。
「そんなことを言えば、悠里が戻ってくるとでも思ったのか。俺が悠里を手放すとでも、思ったのか! お前が好きなのは、俺に愛されている悠里だ。もう二度と悠里の前に現れるな」
「なんだよ、この暴力男が! お前、こんな男が……」
「好きよ。あなたなんかよりずっと私のことを愛してくれるの」
紳に向けた言葉は本音だった。
伊吹さんと付き合っているわけじゃないのに。
「もう、二度と来ないで。私はあなたを愛すことはもうない」
そう声を振り絞ると、紳は私を睨み付けてから立ち去った。