秘書室室長がグイグイ迫ってきます!

「先ほどの資料の補足です。これでよろしいでしょうか」


実に事務的に、できるだけ冷静に。

今ここにいるのは、私の愛する伊吹さんではない。
上司の高畑さんだ。


「あぁ、これで十分だ。俺は午後から社長に同行する。来週のスケジュールチェックと手土産の手配を頼む」

「わかりました」


伊吹さんもいつものサイボーグだった。
冷静沈着な彼らしく、声色ひとつ変えず淡々と私に指示を出す。


伊吹さんは今日も忙しく、昼休憩も取れなかった。
手土産を買いに出た私は、野菜ジュースを差し入れしたかったけど、それもできなかった。


彼が出かけてしまうと、やっと肩の力が抜けた。

この恋心が本当は一方通行だったのかもしれないと思うと、胸が張り裂けそうだった。
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