秘書室室長がグイグイ迫ってきます!

会議室に一歩足を踏み入れると、意を決して口を開いた。


「とりあえず、座れ」

「はい」


一番手前の椅子に座ると、彼は九十度の位置に座った。


「俺はこのまま出なくてはならない」

「はい」

「でも、大切な女が所在不明で、気が狂いそうだ」


彼の発言を聞き、一瞬息ができなくなる。

私のことをまだ『大切な女』と言ってくれるの?

ううん、違う。
私は大切な女のひとりにすぎない。

私はそうやって自分の気持ちにブレーキをかける。


うつむいてなにも言えないでいると、彼は再び口を開いた。


「今日は、帰るか?」


怒っていると思った彼の声は優しく、彼への気持ちが溢れ出てしまいそうになる。

それでもグッとこらえて首を振ると、彼は大きな溜息をついた。
< 298 / 370 >

この作品をシェア

pagetop