秘書室室長がグイグイ迫ってきます!

「疲れてるみたいだけど、大丈夫か?」


予約したときは、ここまで彼女がクタクタになるとは思っていなかった。


「伊吹さんと一緒にいられるんですよ。大丈夫に決まってます」


満面の笑みでそう言う彼女を前に、我慢しきれなくなり、唇を奪ってしまった。


温泉と言っても今回は近場にした。
遠くに行くより、ゆっくりしたい。というか、させたい。

たまには贅沢な時間の使い方もいいものだ。


車で一時間ほど走ると、静かな山の中にたたずむ立派な旅館が見えてきた。
実はここは聡さんの御用達で、よく奥さんを連れだって羽を伸ばしに来ていると聞く。

今日はさすがにいないはずだが。


「ここだ」

「うわー、素敵なところ」


車を降りると悠里は子供のようにはしゃいでいる。
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