笹に願いを
お義父さんが特に何か言うわけでもないのは、たぶん男性だからだと思う。
でもお義母さん同様、私のことを気にかけてくれているのは、十分分かっているつもりだ。
ただ、気遣いの表現方法が、父親(男)と母親(女)では違うというだけなのだろう。
お義母さんがうちに来る時は、お義父さんが運転手を買って出てくれていることや、「お父さんね、今度はいつ織江ちゃんとこに行くんだ?って毎週聞いてくるのよ」と、お義母さんは、とっておきの秘密を共有するような弾んだ小声で、私にコッソリと教えてくれた。
ある日、「私にはこれくらいしかできんからな。ごめんな」とお義父さんから言われて、私はただ、嬉し涙を流すことしかできなかった。

義彦に、おおらかさや優しさ、頼りがいや包容力があるのは、このご両親に育てられたからだ。
そして、お義兄さんと一緒に育った環境も一役買ってると私は確信した。

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