女の秘密 -序章-



横で眠る男性の存在を思い出し、もう一度顔を見る。

昨日は暗がりで出会い、薬の所為で顔も覚えていなかったが、整ったその顔は誰もが振返るほどの良い男だった。


『こんな顔だったのね』


顔にかかる髪を手で払い、そっと顔を近づけるが、起きる気配は無い。

引き締まった腕と胸板が見える。

記憶には無いが、相性も良かったと思う。

薬の所為とはいえ、一夜を共にした事は事実だが、一度きりだ。

頬に軽く口付けをして、ベッドから抜け出すと手早く服を身に纏った。


『イヤリングが無いわ』


情事の時に無くしたのか、逃げる際に無くしたのか、右側の黒曜石のイヤリングが無くなっていた。
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