政略結婚ですが愛されています
「だ、大丈夫です。あ、あの、下ろしてください」
「暴れると落ちるぞ」
お姫様抱っこされた私の目の前には、神田課長の整った顔。
耳に届くのは吐息交じりの優しい声。
一瞬にして体から力が抜け、私は体を委ねた。
タクシーに乗り込むまでのほんの三分。
時折私を見下ろす神田課長の視線にドキドキしながら、熱くなる体をどうしようかとじっとしていた。
入社後すぐに総務部へ配属され、経営企画部の葉月常務を担当すると決まった私に、神田課長との接点が持てたことを羨む声がいくつもかけられた。
だけど、見た目だけでなく有能な仕事ぶりでも評判の神田課長と私が、必要以上に近づくことはないだろうと考えていた。
そんな課長が、私を助けてお姫様抱っこまでしてくれるなんて……。
恋愛経験ゼロの私には、神田課長の体温を感じられるその時間は夢のようだった。