この広い世界で、2度目の初恋を


『奥に誰かいるんすか?』

誰もいないから、だから来ないでっ!!

内心ドキドキしながら、2人のやりとりを聞く。


『いいや、誰もいないよ?』

『そうっすか……気のせいか?』


先生のおかげで、なんとか難を逃れた。


『だから俺、早くアイツに会わねーと』

『ふふっ、そうだね。会えるといいね』

『何スカ、その含んだ言い方は』


私は……今のままじゃ樹くんには会えないよ。

だって、樹くんの言葉の一つ一つを信じたいのに、信じて傷つくことが怖い。

こんな気持ちで、樹くんに会っても……苦しいだけ。

また一人考え込んでいると、ガラガラガラッと、扉が閉まる音が聞こえた。

『添田さん、もう出てきて大丈夫だよ』

『あ……はい』 


カーテン越しに鈴原先生が私に声をかけてくる。

私は、カーテンを開けて、鈴原先生に近づいた。



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