呼吸(いき)するように愛してる
その後、そうお願いするはずだったのに「美羽、すごいね!」と、匠くんに頭を撫でられたら、嬉しくなって言う事を忘れてしまったのだ……



匠くんが、小学五年生になってからだったかな?私の家で一緒に過ごす時間が、だんだんと短くなっていった。

夕食は一緒に食べていたけど、要お兄ちゃんも匠くんも成長して、どうしても大人が見守っている所で……という感じではなくなってきた。

二人共しっかりしていたから、ともママもお母さんも、ある程度は二人に任せていた。

匠くんが中学に入学してバスケ部に入ったら、夕食さえも、一緒に食べられない日もあった。

だから私は、匠くんを見かけたら張りついた。夕食を食べている匠くんの隣に、くっついて座り、保育園であった事をあれこれと話した。

匠くんが聞いて、楽しいお話ではなかっただろうに、いつもニコニコしながら私のお話に相槌を打ってくれた。

そして、隣の自分のお家に帰る前には、私のおでこに「おやすみ」のキスをしてくれる。

これも、匠くんが小学校の高学年になった頃、やめられそうになった。

私は、精いっぱいおねだりをした。帰ろうとする匠くんの腕にしがみつき、匠くんを見上げて言った。

「匠くん、おやすみのチューは?匠くんがチュッてしてくれなきゃ、美羽、さびしくてねむれないよ……」

私は匠くんを見つめて、必死で訴えた。何でだか瞳には、じんわりと涙が滲んできた……

匠くんは、眉尻を下げて薄く笑いながら、私を見下ろした。匠くんの澄んだ瞳には、今にも泣き出しそうな私が写っている。

あ……私、またこんな顔をしている……そうすると、匠くんがどうするのか、わかってしまう……

ゆっくりとしゃがむと、匠くんは私と目線を同じにしてくれた。眉尻を下げて笑ったまま、フッ…と小さく息を吐いた。

私は胸が、チクンと痛くなる。

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