呼吸(いき)するように愛してる
突然出てきた“美里”の名前に、ショックを受けた。

そうだよね……美里さんと匠くんは、同期だよね……

匠くんは、右手で目元を覆い『しまった』とでも言うように、溜め息をついた。

「悪いけど、今日は帰る。俺が頼んだビールは、飲んどいて」

赤井さんの言葉は無視して、匠くんは言った。

「はっ!?おまえ、今来たところだろ?もうすぐ美里も来るって、連絡あったのに……」

チクン!と胸が痛む。

この同期会に美里さんが来るって事は、美里さんも、この近辺の支店で働いているんだよね?……もしかして、匠くんと同じ本店とか……

「美里には、よろしく言っといて」

ていう事は、美里さん本店ではないのか。

「まっ、おまえはプライベートでも会えるもんな」

ニヤリとして、赤井さんが言った。

やっぱりそれって、匠くんと美里さんが付き合ってるから…だよね……?

「……じゃあ、悪いけど…お先に!」

結局、赤井さんの言葉はほとんど無視して、みんなに対して、挨拶をした匠くん。

「「「お疲れ!」」」

「美羽ちゃん、今度一緒に飲もうね~!」

みんなに挨拶を返され、赤井さんは、ヒラヒラ手を振りながらそう言った。

またもや、ズンズンと、私を引きずるように歩き出した匠くん。私は、ペコッと頭を下げて挨拶するのが、精一杯だった。

少しだけ落ち着いてみれば、周囲の人達からの視線を、ビシバシと感じる。

それでなくても、匠くんは目立つのに、そんな匠くんが、強引な感じで私の手を引いて歩いている。

今さら恥ずかしくなって、私は、できるだけ俯いて歩いた。

お店の駐車場に、匠くんの黒色のミニバンが止まっていた。

カチッ!と、ロックが外される。

「匠くん、お酒飲んでないの?」

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