呼吸(いき)するように愛してる
「ああ。仕事で遅れて、ビールを注文して、トイレに行こうと思ったら、美羽がいた。だから、まだ一杯も飲んでない」

「…ごめんなさい……」

私は悪くない!と思いながらも、何となく咎められているように聞こえて、謝ってしまった。

当たり前のように、助手席に座ってしまったが、考えてみれば、匠くんの車に乗るのは初めてだ。

シトラス系の爽やかなカーコロンの香りに包まれながら、急に緊張してきた。

彼の車の助手席に乗るって、憧れてたよな……たっ、匠くんが“彼”じゃない事は、充分にわかってるけど!

神様、ちょっとくらいの妄想は、どうか許してください。

勝手に許しをもらった後、ドキドキする胸を右手で押さえながら、チラッと運転席の匠くんを見れば、目が合ってしまった。

慌てて目を逸らせば、隣の匠くんがフッと小さく息を吐いた。

「あの時は、いいって言ったけど……どうして美羽が、合コンに行くんだ?」

エンジンをかけ、車が動き出した後、匠くんがそう言った。

「えっ!?……」

匠くんを見たが、匠くんは前方を見たままだった。

どうしてその事を、やけに言われるのか……私だって、二十歳を過ぎている“大人”だし。合コンに誘われるくらい、普通の事だと思うけど。

匠くんの口調は、もう怒っている感じではないが、心配しているようにも聞こえる。

……匠くんにとって私は、まだまだ手のかかる“妹”にしか見えないんだろうな……

そう思うと、無性に悲しくて、腹が立ってきた。

「どうしてそんな事訊くの?私だって、合コンくらい、普通に行くし!」

本当は苦手だけど、自分の腹立ちをぶつけるように、そう強く返した。

「それは……」

私の強い返しにびっくりしたように、匠くんがチラッと私を見た。

< 160 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop