呼吸(いき)するように愛してる
「それは、本当に大丈夫!王子様の登場に、こっちもあっちも、テンション上がったから!」

「王子様って……」

その表現は……まあ、わかるけど……そんなものなの……?

「美羽ちゃんが拐われていった後、美羽ちゃん狙いだった須賀さんが、すぐに盛り上げ役になってくれたし。次のカラオケまで、しっかり楽しんだわよ!」

須賀さんが盛り上げ役なんて、ピンとこないけど。一番迷惑かけたのは、須賀さんなんだ。……そもそも、須賀さんに強引に誘われた結果ああなってしまったんだから、そんなに気にしなくてもいい?

んー……いいにする!

「美羽ちゃんの片想いって言ってるけど、本当にそう?」

私が一人で納得していたら、少し真剣な顔をした知花さんが、そう訊いてきた。

「そうですよ。匠くんには、同い年の…彼女がいますから!」

やっぱり匠くんと美里さんは、付き合っていた。

探らないようにしてたのに、匠くんの同期の赤井さんの言葉から、その事実をしっかりと認識してしまった。

「そうなの……この前の匠くんの様子を見たら、匠くんも美羽ちゃんの事、大事にしてると思ったんだけどな」

「……大事には、してくれています。それは、手のかかる“妹”としてですけど」

肩を竦めて、薄く笑う。知花さんは納得いかないようで、再び口を開いた。

「あんな風に、有無を言わせずに拐っていくのが、“妹”への態度かな?私には、匠くんがヤキモチをやいているように見えたけど?」

「ヤキモチ……知花さんにそう見えたなら、それはちょっと嬉しいです」

知花さんを見ながら笑って言ったら、知花さんが、わずかに顔をしかめた。

「美羽ちゃん……そんな寂しそうに笑わないで!」

知花さんが座っている椅子のコマを転がして私に近付くと、両手を伸ばしてギュッ!と抱きしめてくれた。

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