呼吸(いき)するように愛してる
リビングの壁に掛かっている時計の、長い針と短い針が一直線になった。ポ~ン!と軽やかな音が、六回鳴り響く。

午後六時になっても、お外はまだ明るい。

私は、壁掛け時計を睨みながら考えた。

うちの夕食が始まる時間は、だいたい午後七時過ぎ。匠くんは、その時間ギリギリまで帰ってこないかもしれない。

早めに帰ってきても、匠くんの自宅の方に帰ってしまうかもしれないし……

七時くらいからご飯を食べて、それからお風呂に入っていたら、すぐに「おやすみ」の時間になってしまう。

短冊は、金曜日の朝から七夕祭りが始まるまでの時間に、笹に括りつけておかなければいけない。

短冊を書けるのは、もう今日か明日しかないのだ……

私は、決心した。黄色とピンク色の短冊を、シワが寄らないように、落とさないように、大事に持つ。

匠くんを迎えに行こう!お姉ちゃんが、匠くんは、コウくん家に行ったと言っていた。

コウくんは、匠くんの同級生で保育園から一緒だ。幼なじみで“親友”てやつだと、匠くんは言っていた。

コウくん家なら、私も匠くんと何度か行った事がある。コウくんにも弟妹がいて、妹みたいに私にも優しくしてくれる。

もちろん、匠くんが一番優しいんだけど!

二階の自分の部屋にいたお姉ちゃんにも、キッチンで夕食を作っていたお母さんにも、何も言わず自分の家の玄関を出た。

匠くん家の、玄関先を見る。家に明かりが付いている。でも、匠くんの自転車はない。私が保育園から帰ってきた時もなかったから、自転車でコウくん家に行っているのは間違いないと思う。

要お兄ちゃんは、帰ってるんだ。でも、こんな風に自宅にいて、ずっと私の家にいる事はなくなった。それは、匠くんも同じで……

やっぱり、匠くんを迎えに行かなきゃ!

俯いていた顔を上げて、私は歩き始めた。

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