呼吸(いき)するように愛してる
ここを曲がるんだ。……あれ……?どっちに曲がるんだっけ?…右?……それとも、左……?

とりあえず、右に曲がって十メートルくらい?歩いてみた。立ち止まって、周りを見てみる。……わからない……

戻って今度は左に曲がり、また十メートルくらい歩いてみる。……やっぱり、わからない……

私は、公園の出口に戻って立ち尽くす。

どちらの景色も、コウくん家へ繋がらない……思い出そう!私は匠くんと、何度か行った事があるんだから!確か、コウくん家の玄関には……

私は、思わずその場にしゃがみこんでしまった。

何も……!何も、思い出せない……

私が覚えているのは、繋いだ匠くんの手があったかかった事とか、「♪あーる○~!あーる○~!……」と私が歌ったら、匠くんが一緒に歌ってくれた事とか……

思い出すのは匠くんの顔や姿ばかりで、周りの景色なんて、ちっとも見ていなくて……

「もう~~……」

地面を見ながら、大きく息を吐いた。どうしてもっと、早く気付かないかな。匠くんが隣にいたら、私はいつも、匠くんしか見ていないじゃんっ!

ショックで、身体が急に重くなったように感じた。コウくん家に、匠くんを迎えに行けない!……

……帰ろうか……ここにいても、どうしようもないよね……?

呆然としたまま、もと来た道を戻り始めた。

それでも…短冊は、大切に持っていた。

何も考えられないまま、ノロノロと公園の中を歩く。

「いたい……」

私は、立ち止まった。実は少し前から、両足の小指が歩くと痛かった。

でも『匠くんを迎えに行く』という明確な目的があったから、気にならなかった。……と言うより、気にしないようにがんばって歩いていた。

それが、その目的が達成できないと気付いてしまった……

< 19 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop