呼吸(いき)するように愛してる
*****



自分の気持ちに、ちゃんと向き合っていなかったのに、地元に就職を決めていた──

つまりは、そういう事なんだ。

大学卒業、引っ越し…と慌ただしい中でも、頭の片隅で、時には頭の中のど真ん中で、その事をずっと考えていた。

美羽と離れても、俺の想いは変わっていない。むしろ、どれだけ特別な想いだったか気付かされた。

美羽も高校生、十六才になる。

俺達が卒業した高校に、かなりがんばって勉強して、合格したそうだ。

「匠と同じ高校に、美羽ちゃんも行きたかったのね~!」

母さんはそんな風に言っていたけど、それは本当だろうか?

……今なら…俺の気持ちを伝えても、美羽を傷付けない……?

迷いながらも、最後には決心した。

美羽に、自分の気持ちを伝えようと──


四つ葉銀行に入行し、ニ週間の研修を終えて配属されたのは、実家がある町から車で片道一時間以上はかかる所だった。

毎日車で通うのは大変だ。列車なんて、本数も少ないのに、もっと大変だ。冬には、雪が降る事だってある。

独身者のほとんどがそうするように、俺も会社の寮に入る事にした。

部屋は狭いが、家電や家具など一通りの物は揃っていて、自分の身の回りの物があれば、すぐにでも生活が始められそうだった。

皮肉なものだ。美羽を傷付けそうで、あえて距離をとり、できるだけ会わないようにしていた四年間。ようやく美羽の近くに戻り、自分の想いを伝える決心をしたとたん、また美羽と離れる事になった。

……銀行に就職した以上、もちろんこういう可能性もある事はわかっていたのに……俺もまだまだガキだった。

美里も同じ四つ葉銀行に就職した事には、本当に驚いた。

兄貴が専門学校に通う為に県外に出たから、二人は別れたと聞いていた。

< 261 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop