呼吸(いき)するように愛してる
たとえその女の子が、同級生のよく知っている女の子でも、家に上がってお茶を飲んで…なんて事はなかった。

お茶を出せば、それだけ滞在時間が長くなる。一人だけにすれば、特別扱いをしているように見える。

……そんな風に、気を遣ってしまうような人なの?

……そうして、できるだけ長く一緒にいたいと思うような人なの?

それに……「美里」って呼んだ。匠くんが、女の子の事を名前で呼んでいるの、それも呼び捨てで、初めて聞いた……

誰かにキュッ!と掴まれたみたいに、心臓が痛い。

もしかして美里さんは、匠くんにとって『特別な女の子』なの?

唇を噛みしめ、ギュッ!と目を瞑る。クッキーの入った袋と、りんごの入ったナイロン袋を持つ手にも、力が入る。

そこから、一歩も動けないでいると

「美羽?」

そっと目を開くと、開けられたままの扉の前に並んで、匠くんと美里さんが立っていた。

……すごく、お似合い……

俯いて、自分の小さな身体を見た後、パッと顔を上げた。

「匠くんと、要お兄ちゃんと、聡くんに、バレンタインデーのクッキーを持ってきたよ!」

そう言いながら、匠くんに駆け寄る。匠くんの少し前で立ち止まって、クッキーの入った袋を掲げた。

「あなたが“お隣の美羽ちゃん”だ!」

美里さんは、一歩私に近付くとスッとしゃがんだ。

間近で見ても、やっぱり美里さんはきれいだった。正面から見て、右目の下にホクロがあるのがわかった。それが、すごく大人っぽく見えた。

ニコニコしながら、私を見る美里さん。それにつられて、私も笑ってしまっていた。

「美羽、俺と同じクラスの美里さん。…美羽、上着、ちゃんと着てこなきゃダメだろ」

「こんばんは。…大丈夫!すぐに帰るから!」

私が、ペコッと頭を下げると「こんばんは」と、美里さんも小さく頭を下げた。

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