呼吸(いき)するように愛してる
「起きてる!」

軽い咳をしながらだったけど、思ったよりもしっかりとした声で、要お兄ちゃんが返事をした。

「美羽ちゃんが、バレンタインデーにクッキーを持ってきてくれたよ!苑子からは、りんごをいただいたわよ!」

「要お兄ちゃん!美羽、チョコチップクッキー作ってきたよ!ほとんど一人で作ったんだよ!早く元気になって食べてね!お母さんからは、りんごと『お大事に!』だって!」

要お兄ちゃんの部屋の扉の前に立ち、自分の気持ちが届くように、一言一言に想いを込めた。

「美羽、ありがとう!美羽のクッキー食べるために、早く元気になるから!そのママにも『ありがとう』って伝えておいて」

要お兄ちゃんの言葉は、すぐ傍で聞こえた。きっと扉のすぐ向こうで、座って私の話を聞いてくれたのだろう。

「わかった!要お兄ちゃん、またね!」

少し長めに話しても、変わらずしっかりとした要お兄ちゃんの声にホッとして、扉の前を離れた。

「美羽ちゃん、ほとんど一人で作ったんだ。すごいね!」

「へへ~」

ともママと歩きながら話す。ともママから誉められて、ちょっと照れる。

「美羽ちゃんのクッキー、いっつも大事に食べるんだよ~、匠。他の子からいただいたチョコは、押しつけてくるのに、美羽ちゃんのクッキーは、一欠片しかくれないの!」

「……そう、なんだ……」

ともママは、ニコニコしながら話しかけてくれるけど、私の顔は強張る。

匠くんが今年、一番大事に食べるのは、美里さんからのものだ。ともママ、いつもよりもたくさん、美羽のクッキー食べられるかも……

そんな風に思ったら、目がウルウルしてきた。

慌ててともママに、さよならの挨拶をして匠くん家を出る。

「さむっっ!!」

わかってたはずなのに、やっぱり寒さにびっくりして、目のウルウルが引っ込んだ。

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