呼吸(いき)するように愛してる
バレンタインデーの日、美里さんに会った事を、あまり考えずにいられた事。

熱が下がって身体が楽になって、ついつい美里さんの事を思い出す。でもまだ、本当に元気ではない私の頭と身体は、すぐにそれを考えるのを放棄する。

……このまま、何も考えずにいられたら……

「匠くん、大好き!」

以前のように、何の迷いも躊躇いもなく、匠くんにそう言えるのかな……

頼りない灯りの中、ベッドに横になり天井を見上げ、ボー…としながらそんな事を思っていた。

コンコン!静かな部屋に、扉をノックする音が響いた。

「はーい!どうぞ!」

反射的に、そう返事する。ボーッとしていたわりには、しっかりと声が出た。

扉が開き、廊下の灯りを背に入ってきたのは……匠くんだ。匠くんなら、シルエットだけでもわかる。

「美羽、電気つけてもいい?」

匠くんの言葉に、「いいよ!」と返事をした。パッ!と部屋が明るくなり、眩しさに少し目を細めながら、上半身を起こす。

枕元の目覚まし時計を見ると、午後七時少し前だ。

今日は早めに夕食を食べた。五時半くらいに、野菜と卵の入ったあったかいうどん。今日の昼食まではお粥だったけど、食欲も出てきたので、お母さんにうどんを作ってもらった。

うどんを食べて、お薬を飲んでから、ベッドに横になった。少し前に目が覚めるまで、一時間近く寝てたのかな?

マスクを着けた匠くんは、私のベッドの縁に腰かけた。

「美羽、プリン食べる?」

手に持っているトレイを見せながら、そう聞いてきた。

「食べるっ!!」

クスッと目元で笑うと、トレイをベッドの上に置く。おしぼりを渡されたので、手を拭いて匠くんに返す。

プリンの白い器とスプーンを渡される。右手にスプーン、左手にプリンの器を持ち、それをくっ付けるようにした。

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