呼吸(いき)するように愛してる
「いただきます!」

スプーンで一匙すくって、口に入れる。

「んー、おいしい!ともママの“おうちプリン”だね!……んー…やっぱり最高っ!」

最初の一口は、ツルッと飲み込んでしまったので、すぐにまた、一匙すくって口に入れた。

卵とミルクの優しい味。甘味はしっかりとついていて、底にあったカラメルソースから、仄かに感じる香ばしさ。

私の頬が緩みっぱなしなのを見て、匠くんの両目がきれいな弧を描いた。

着けていたマスクを外して、ジーンズのポケットに入れた。

「母さんのプリン、久々。…いただきます!」

両手を合わせてそう言うと、スプーンとプリンの器を持って食べ始めた。

「うん、うまい!……僕は、カフェのプリンより、小さい頃から食べてる、こっちのプリンの方が好きだな」

私は匠くんの言葉が嬉しくなり、匠くんの顔を見て「フフ…」と笑った。

ともママは、カフェで主にデザートを作っている。

カフェでともママが作るプリンは、濃厚でなめらかで甘さが上品で。カラメルソースのほろ苦さが、いいアクセントになっている、大人味のプリンだ。

私が三才くらいの時、カフェでデザートプレートを食べた。プリンにシフォンケーキ、フルーツや生クリームがトッピングされた、見た目もきれいなプレートだ。

私はワクワクしながら、プリンを口に入れたのだが……お子様の私は、カラメルソースのほろ苦さが気になった。

普段から「出された物は残しちゃダメ」と両親から強く言われている。眉根を寄せながらも、生クリームやチョコソースの力を借りて、なんとかプリンを食べきった。

私が無理をしてプリンを食べていた事は、周りから見て、すぐにわかったのだろう。

「お子ちゃまの美羽には、このプリンのおいしさは、わからないわよね?」

お姉ちゃんが、愛らしく小首を傾げながら、そう言った。

「っ!……」

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