呼吸(いき)するように愛してる
私は、口角を上げて笑ってみた。

そのカフェで食べたチョコレートムースは、おいしかったけど、やけにほろ苦く感じた。

ちょっとだけほろ苦い思いもしたけど、ほとんどが楽しい思い出ばかりの一泊二日の旅行だった。

家に帰ると、残念な事を聞かされた。

「えっ!?匠くん、帰って来てたの~っ!?」

私がみちるちゃんと旅行に行っている間に匠くんが家に帰って来ていて、私が自宅につく少し前に、どこかに出かけたようだ。

それからまた、笑っちゃうくらいすれ違い、ゆっくり話す事がないまま、匠くんは行ってしまった……


四月──

真新しい制服に、袖を通した。

東高の制服は、セーラー服だ。襟には、白いラインに白のスカーフ。

他の高校の、ブレザーにチェックのスカートも可愛いけど、学生の間しか着られないセーラー服を、実は結構気に入っている。

新しく始まった生活にワクワクしていた。

……と言いたいところだが。ワクワクは、している。がんばってお勉強して、行きたかった高校に合格したのだから。

ただ、がんばる源となった匠くんが、帰って来なくなったのだ……

四つ葉銀行へ入行して研修期間の後、匠くんが配属された支店が……ここから車で、一時間以上はかかる支店だったのだ。

当然、自宅から通うのは大変なので、銀行の寮に入る事になった。

ガッカリした。……私も、少しは大きく…大人に近付いたと思っていたから。

身長も、今は一六二センチまで伸びた。匠くんは一八六センチあるから、やっぱり差はあるけど。華奢で男の子みたいだった身体も、多少は丸みを帯びてきた。むっ、胸だって結構大きくなったよ。髪の毛も、ずっと短かったけど、三年の夏休みから伸ばし始めていた。
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