呼吸(いき)するように愛してる
お母さんに教わりながら、ラッピングを外し、茎の長さを整えて花瓶に活けた。

自分の部屋に飾った白いバラを、ただずっと眺めていた。


いつ決めたのかわからないけど。その事を知った時なのか、バラの花束が届いた時なのか。

夏休みに入ってすぐ、私はその事をみちるちゃんに話した。その時は、一緒に行ってほしかったし。

「夏祭りに、匠くんが出るの?それを見に行きたいの?」

みちるちゃんの問いに、私は大きく頷いた。

これは全部、ともママからの情報なんだけど……

匠くんがいる銀行がある市で、毎年大きな夏祭りがある。私も知ってはいるが、遠いので見に行った事はないけど……

そこで、企業や自治会の『連(れん)』が出て踊りを踊る。毎年、四つ葉銀行の連も出ている。その連のメンバーに選ばれるのが、その市の支店に所属する入行三年目までの若手が中心らしい。

入行一年目の匠くんも、当然メンバーに選ばれた。忙しい合間を縫って、踊りの練習をしているのだそうだ。

その夏祭りは、八月の第一週の日曜日に開催される。踊りの連は、午後二時くらいから出て、夜には近くを流れる川の川沿いで、打ち上げ花火が上がる。

本当は花火も見たいけど、遠いし、列車での移動になるから、匠くん達の踊りだけを見て、帰って来る事になるだろう。

話終わって、私が短く息を吐く。

「わかった。夏祭りに行こう」

いつものようにみちるちゃんは、表情を変えずに頷いた。私がお礼を言うと、ゆっくりと瞬きをした。


高校に入学して、ラッキーな事にみちるちゃんと同じクラスになった。

ヒロくんは、一学年に一クラスだけある『特別進学コース』、略して『特進(とくしん)』のクラスに入ったので、別々になったけど。

テストの成績上位者で、国立大や有名私大なんかの合格を目指す生徒が、集められるクラスらしい。

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