呼吸(いき)するように愛してる
ゆっくり話せなかったとしても、せめて、匠くんに会いに来た事くらいは伝えたい……電話でしか言っていない、誕生日プレゼントのお礼だって、本当は顔を見て言いたい!

ホームページには、控え場所の周辺地図も出ているが……

「……みちるちゃん……」

思わず、すがるようにみちるちゃんを見てしまう。

「大丈夫。私がナビするから」

みちるちゃんが、微かに頷く。私は安心して、ホッ…と息をついた。

私は、地図が苦手だ。間違いなく“方向音痴”だ。初めて行く場所で、目的地に迷わずに辿り着く自信がない……

さすがみちるちゃん……そんな私の不安を、ちゃんとわかってくれていた。

「美羽、夏祭りの日は無理にしても、匠くんに、気持ちを伝えないの?」

みちるちゃんから、時折こう言われる。

ダメだったとしても、きちんと気持ちを伝えれば、次に進めるはず……と、みちるちゃんは言う。

……そう、なのかもしれない……でも、私は心のどこかで思っているんだ。

今の私は、まだ子どもだけど、もう少し大人になったら匠くんに、一人の女の子として見てもらえるかもしれない……て……

高校生になって心も身体も、かなり成長したつもりだったけど……

周りの匠くんと同い年くらいの女の人を見れば、やっぱり自分が幼く感じる。匠くんに対しては、どうしても弱気になってしまう。

「今は、まだダメ……」

私は、首を横に振る。

「そっか……」

みちるちゃんは、ゆっくりと瞬きをした。


夏祭り当日──

自転車でみちるちゃん家に迎えに行き、駅に向かう。

車だと一時間以上はかかると聞いたが、快速列車を選んで一時間かからないくらいで、夏祭り会場の最寄り駅に着いた。

この駅前から真っ直ぐに伸びた、片側三車線の大通りが、踊りの連が通るコースだ。

< 83 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop