呼吸(いき)するように愛してる
「匠くん……」

久々に会った匠くん……隣の同い年くらいの男の人と、笑いながら話している。

浴衣姿、初めて見た。カッコいい!匠くんは何を着ても、カッコいいんだけど。長めの前髪を後ろに流すようにセットされていて、私の知っている匠くんとちょっと違う。……すごく大人っぽくて、色っぽい。男の人を色っぽいなんて……私、どうした!?

「たっ……」

匠くんを見つけて、立ち止まったのはほんの一瞬だったと思う。自分の感じた事に苦笑した後、匠くんの名前を呼んで、さらに近付こうとした時……

「美里!」

後ろの方を振り向くようにしながら、匠くんが誰かを呼んだ。

えっ……?みさと……?

少しして姿が見えたのは、匠くんと同じ四つ葉のクローバー柄の浴衣を着た、背の高い女の人。匠くんの隣に立ち、笑顔で会話に参加する。

「美里…さん……」

……間違い、ない……あの、美里さんだ。右目の下の泣きボクロ……さらに、大人っぽく見える……

髪の毛をアップにしたうなじが、すごくきれい。笑って話しながら、時折匠くんの腕に触れたり、顔を覗きこむようにしたり……

もう……!初めて並んだ二人を見てから、九年、経ったんだよな……それでもやっぱり……イヤ!あの時よりも……二人は、すごくお似合い……

「美羽!やっと、追いつい……」

固まった私の後ろに、みちるちゃんがやって来た。

私は踵を返すと、みちるちゃんの手首を掴んだ。

「行こう!」「えっ!?」

みちるちゃんの手首を掴んだまま、一刻も早く、その場を離れようと足を動かす。

「みっ、美羽っ!」

みちるちゃんが珍しく、戸惑ったように私を呼ぶ。

「ごめんっ!」

私は一言だけみちるちゃんに言うと、いろんな人にぶつかりながら、とりあえず、人の少ない方に歩いていった。

< 87 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop