呼吸(いき)するように愛してる
「あっ……」

わずかに、声が出る。ずっと読んでみたいと思っていた本だ!うん、次に借りよう!……ちょっとだけ、見てみようかな。

今回借りるつもりのハードカバーの本を二冊、左手で胸に抱え、高い所にある本に、右手を伸ばす。

成長したおかげで、高い所の物を取る時、苦労する事はあまりないんだが……

ちょっと無理な姿勢で取ろうしたせいか、本に指が届いているのに、うまく力が入らなかった。

面倒がらずに、手に持っていた本を置いてから、次の本に手を伸ばせばよかったのだが……

「もう…ちょっと……」

少しむきになりながら、右手を伸ばしていたら、後ろから伸びてきた手に、スッと本を抜きとられた。

「えっ?」慌てて後ろを振り返れば……

「はい」微笑みながら本を差し出す、安西先輩がいた。

少しの間、軽く見上げながらほけーっと見つめてしまった。その後、すぐに我に返る。

「あっ、ありがとうございますっ!」

つい、大きな声でお礼を言うと、「しぃー」と安西先輩が、人差し指を唇に当てた。

ハッ!として右手で口を軽く押さえた後、囁くようにお礼を言って、両手で本を受け取った。

笑いを噛み殺しながら、安西先輩が訊く。

「もしかして、新入生?」

「はい!一年五組 朝倉美羽です」

ピシッ!と背筋を伸ばし、自己紹介した。大丈夫、今回は声を抑えた。

「俺は……」

「もちろん、知ってます!生徒会長の安西先輩です」

背筋を伸ばしたまま、続けた。安西先輩は、クスッと笑った。

「覚えていてくれて、ありがとう。三年六組 安西拓夢(ひろむ)です。不自然な格好では、本を取らない方がいいよ、朝倉美羽さん」

安西先輩に名前を呼ばれた事と、ちょっとしたミスを指摘されて、ダブルの恥ずかしさを感じる。

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