呼吸(いき)するように愛してる
「はい、気を付けます……」

カッ!と赤くなった顔をごまかすように、俯く。すると私の頭のてっぺんが、クシュッとかき混ぜられた。

ん?と思って顔を上げたら、安西先輩が私の頭に手を置いていた。

「っ!」さらに身体の温度が上がる。

「またね、朝倉美羽さん」

そう言うと、安西先輩は行ってしまった。私は、その後ろ姿を見つめながら、鼓動が早く強く打つのを感じていた。

それから、時々安西先輩と図書室で顔を合わせるようになった。

最初は、会釈だけ。最初に見たあの微笑みを返されると、ちょっと嬉しかった。

同じ作家さんが好きだとわかると、オススメの本を教えてもらったり、読んだ後の感想を話した。

いつも五分程の短い時間だけど、それが秘かな楽しみになった。

そして……

「じゃあ、また!」

そう言って立ち去る、安西先輩の後ろ姿を見送るのが、もう一つの秘かな楽しみとなった。

少しだけドキドキする胸を押さえながら、いつも見送っていた。

たま~に、校内で安西先輩を見かける時は、たいてい誰か…女子が一緒の事が多く、私にとっては、遠い存在に感じた。

みちるちゃんにも、図書室でたまに安西先輩に会う事は話していたけど……安西先輩の後ろ姿を見てドキドキしている事は、言っていなかった。


……安西先輩を見ながら、そんな事を思い出し、ボーっとしていた。

図書室以外で話しかけられたのは、初めてだった。

「朝倉美羽さん、ちょっと二人で話せるかな?」

後ろの公園を、親指で指しながら安西先輩が言った。

私が声を発する前に、ヒロくんが答えた。

「美羽に何の用ですか?」

ヒロくんのいつもよりも低い声には、不機嫌さが滲み出ていた。

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