どうしてほしいの、この僕に
 翌朝ベッドから起き出してすぐにテレビをつけ、同時に携帯電話でもインターネットのニュースを確認したが、優輝のけがについてはまだ報道されていないようだ。
 なんだか気が抜けた。
 優輝の今後がどうなるのか、気になることが多くてよく眠れなかった。私が悩んだり心配してみてもどうにもならないのはわかっている。でも仕方がないと割り切ってぐっすり眠れるほどの図太い神経を持ち合わせてはいないのだ。
 食欲はなかったが、買い置きしてあったパンを胃に詰め込む。空腹で倒れたら恥ずかしいし、私をかばって負傷した優輝に申し訳ない。
 ひとりの朝は驚くほどスムーズに支度が終わり、いつもより5分早く家を出た。
 おかげで友広くんに会わずに済み、少しだけホッとする。毎朝必ず会うわけではないのに、一度鉢合わせすると必要以上に身構えてしまう。ま、今は完全に無視されているから、そこまで警戒することはなさそうだけど。
 しかし友広くんがいまだにあの態度を貫いているのは、いくらなんでもおとなげない気がする。
 逆に私がふられた立場で相手に会うのがどんなにつらくて泣きそうでも、顔を合わせたら挨拶くらいはしようと努力する。それが大人のお付き合いというものだ。
 そう考えると、友広くんはまだ中身が大人になりきれていないのかもしれない。
 新入社員はそれで通用すると思っているのだろうか。周りも甘やかしすぎだ。容姿が整った人間をちやほやしてしまう気持ちはわからないこともないけど、図に乗る人間もいるのだからほどほどにしたほうがいい。
 ロッカールームを出て給湯室へ向かう。途中で課長が私を呼び止めた。
「昨日から設計図のファイルが見当たらないんだ。別のファイルと一緒に違う場所に紛れ込んだかもしれないんで、探してみてほしい」
「わかりました。見つかり次第、お持ちします」
 コーヒーを淹れようと思ったが、先にファイルを探すことにした。まずは書庫のようにファイルがずらりと並ぶ棚へ赴く。
 目的の棚を見てみると、確かに設計図を閉じた最新のファイルが抜けている。
 背表紙のラベルを目で追うが、別の場所に間違ってしまわれたわけではなさそうだ。ということは、誰かが持っていったまま返却していない可能性が高い。
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