どうしてほしいの、この僕に
未莉との再会を待ち望んでいる俺に、その日は突然訪れた。しかも最悪な形で、だ。
学校から帰宅すると、暗い顔をした父親が玄関に立っていた。何かあったのかと問うと、逡巡するようにまばたきを数回繰り返した。
それから俺の目をまっすぐに見て言った。
「落ち着いて聞け」
「なんだよ」
「シバ通運送の会社と倉庫が焼けて、社長と奥さんが行方不明だ」
「……えっ?」
親父の言葉が頭の中を行き来するが、意味が理解できない。
「望みは薄い……そうだ」
「どういうことだよ」
俺の問いに親父は答えなかった。答えられるはずもなかった。
玄関で立ち尽くしていても仕方がないと気がついた俺は、自転車の鍵を握りしめる。
「住所、わかる?」
「ちょっと待っていろ」
親父は心得たとばかりに前のめりなかっこうで自分の部屋へ向かった。ほどなく薄い冊子をめくりながら戻ってきた。
俺はケータイにシバ通運送の所在地を打ち込み、自転車に乗った。逸る気持ちとは裏腹にペダルが重い。
俺が現場に行ったところでどうにかなるわけではない。だけど家でじっとしていることもできそうにない。何がこれほどまでに俺を突き動かすのか、自分でもわからなかった。
20分ほど自転車をこいで、流通業者の倉庫が立ち並ぶ地区に着いた。
シバ通運送の社屋と倉庫周辺は煙と焦げたにおいが充満し、消防隊員が慌ただしく動き回っている。路肩に消防車と警察車両がずらりと連なり、遠目にも立ち入り禁止の規制線が張られているのが見えた。その外側に大勢のやじ馬がいる。
ここまで来て俺はようやく自分があのやじ馬のひとりになろうとしているのだと気がついた。
少し離れた場所でサドルにまたがったまま自転車を止める。
テレビのレポーターとカメラマンが焼けた社屋を背景に中継している横で、若者たちがケータイを頭上にかざして無神経なシャッター音を響かせた。
目を凝らすと規制線のすぐそばには同じ制服を着た数名が祈るように手を組んでうずくまっている。その奥に年配の男女に囲まれた茶色の制服の少女を見つけた。
――未莉……。
学校から帰宅すると、暗い顔をした父親が玄関に立っていた。何かあったのかと問うと、逡巡するようにまばたきを数回繰り返した。
それから俺の目をまっすぐに見て言った。
「落ち着いて聞け」
「なんだよ」
「シバ通運送の会社と倉庫が焼けて、社長と奥さんが行方不明だ」
「……えっ?」
親父の言葉が頭の中を行き来するが、意味が理解できない。
「望みは薄い……そうだ」
「どういうことだよ」
俺の問いに親父は答えなかった。答えられるはずもなかった。
玄関で立ち尽くしていても仕方がないと気がついた俺は、自転車の鍵を握りしめる。
「住所、わかる?」
「ちょっと待っていろ」
親父は心得たとばかりに前のめりなかっこうで自分の部屋へ向かった。ほどなく薄い冊子をめくりながら戻ってきた。
俺はケータイにシバ通運送の所在地を打ち込み、自転車に乗った。逸る気持ちとは裏腹にペダルが重い。
俺が現場に行ったところでどうにかなるわけではない。だけど家でじっとしていることもできそうにない。何がこれほどまでに俺を突き動かすのか、自分でもわからなかった。
20分ほど自転車をこいで、流通業者の倉庫が立ち並ぶ地区に着いた。
シバ通運送の社屋と倉庫周辺は煙と焦げたにおいが充満し、消防隊員が慌ただしく動き回っている。路肩に消防車と警察車両がずらりと連なり、遠目にも立ち入り禁止の規制線が張られているのが見えた。その外側に大勢のやじ馬がいる。
ここまで来て俺はようやく自分があのやじ馬のひとりになろうとしているのだと気がついた。
少し離れた場所でサドルにまたがったまま自転車を止める。
テレビのレポーターとカメラマンが焼けた社屋を背景に中継している横で、若者たちがケータイを頭上にかざして無神経なシャッター音を響かせた。
目を凝らすと規制線のすぐそばには同じ制服を着た数名が祈るように手を組んでうずくまっている。その奥に年配の男女に囲まれた茶色の制服の少女を見つけた。
――未莉……。