どうしてほしいの、この僕に
この年の夏は全国的に猛暑となり、北の大地も真夏日が続いた。湿度も高く、からりとした気候に慣れ親しんでいる俺には不愉快な毎日だった。
書店内はエアコンが効いているから、夏休み中はバックヤードの片隅に陣取って勉強を進めた。
息抜きに外へ出る。いつもとは違う景色を見たくなった。
自転車に乗り、国道へ向かう。行ってみたい場所があるのだ。
熱風が俺の背中を押す。淡い期待が軽快なリズムを生む。
俺はハンドルを強く握り、サドルから腰を浮かせ、思い切り立ち漕ぎをした。
急いでいるわけではないのに、猛スピードで自転車を走らせる。
何かあるわけではない。
いや、むしろ何もないのかもしれない。
でも見て確かめたかった。そこに行けばきっと何かを感じることができるはずだ。
国道からトラックが行き来する広い道路へとハンドルを切る。
少し進むと目的地が見えてきた。
手前の事業所の脇に立ち並ぶ白樺の向こう――そこにはシバ通運送の灰色の倉庫があったはずだが、今はなにもない。ただ広大な空き地が広がっていた。
俺は以前ここへ来たときとほぼ同じ場所で自転車を止めた。
先客がいたのだ。俺の視線の先で茶色のスカートが揺れた。
――未莉……!
もしかしたらここで会えるかもしれない、と期待する気持ちはあった。
だが、実際に彼女の姿を見つけた俺は、臆病風に吹かれ、その場に固まってしまった。
未莉はしゃがんで花を手向けていた。しばらくして立ち上がると、まっすぐに前を見る。
彼女の目が何を映しているのかはわからない。でもその凛とした立ち姿に思わず俺は見入ってしまった。