強引上司がいきなり婚約者!?
午前11時を過ぎた頃、鮮やかな青色のドアを開けて、ダークネイビーのスリーピーススーツを着た男性が入室してきた。
背が高く顔は小さくて、細いストライプの入ったスーツに濃い緑色の水玉柄ネクタイを合わせるところがハイセンスだ。
きっとあれも、いつも通りブランド物に違いない。
「おはようございます」
低く落ち着いたラの音で彼が挨拶をすると、女性社員のほとんどが色めき立って顔を上げる。
長い脚で芝生色の床をツカツカと歩き、ポチャッとした体型の丹尾(にお)部長に報告をしてから、主任用のデスクに座った。
あれが兎川宗佑だ。
朝比奈ホーム営業部主任28歳、女性人気ナンバーワン社員。
ついでに売り上げも常にトップクラス。
ちょっと癖のある黒髪をオールバックにしていて、まっすぐな眉と目力の強いくっきり二重の両目がより強調されている。
黒目がちの瞳には、睨まれたら吸い込まれてしまいそうだ。
美しい鼻梁と厚めで形のいい唇、それにツルツルのお肌には女の私でも嫉妬してしまうくらい。
今日は朝から顧客と工務店との打ち合わせが詰まっていて、午前中はずっと留守だったのだ。
昨夜のこともあって、つい観察するように彼のことを目で追ってしまう。