強引上司がいきなり婚約者!?
するとデスクの上にあったいくつかの資料に目を通していた兎川さんが、ふと顔を上げた。
「ひえっ」
バッチリと目が合ってしまって、私は慌てて視線を逸らす。
今まで彼を見つめていたことなんてなかったかのように、頼まれていたデータの作成に集中しようとした。
一生懸命に手と頭を動かし、彼の気配を意識に入れないようにする。
しかしそんな私の抵抗虚しく、席を立った兎川さんがズンズンこちらへ迫ってくるのが嫌でも分かった。
ああ、どうしよう。
なにを言われるのかな。
気の小さい私は、兎川さんのような派手で目立って俺様オーラのあるイケメン相手には、どうにも腰が引けてしまう。
実は昨夜、藤也が去り際に置いていったお金だけではふたりぶんの夕食代は払いきれなかった。
もちろん残りは自分で支払おうと思ったのだけど、なんと私の気がつかないうちに、兎川さんが全額会計を済ませてしまっていたのだ。
当然私は、きっちりお返ししようとした。
『そんなことできません。兎川さん、さっきの女性のぶんもあるのに……』
それなのに彼ってめちゃくちゃ意地っ張りで、一銭も受け取ってくれなかった。