強引上司がいきなり婚約者!?
入口のドアはレモン色で、壁は乳白色のガラス。
床はメープルのフローリングで、椅子は緑とオレンジ、テーブルは白だ。
そのピカピカのテーブルを挟んで向かい合わせに座ると、兎川さんは珍しく躊躇して、歯切れ悪く切り出した。
「あー……小枝、お前。昨日の貧弱インテリ男のことがまだ好きか」
彼の視線が気まずそうにしばらく宙を彷徨い、ゆっくりと私を捕えて揺れる。
"貧弱インテリ男"って、たぶん藤也のことだよね。
彼の酷い言われように心の中でプププと笑う。
私は正直に首を傾げて応えた。
「はあ、どうでしょう。昨日のことはショックでしたけど、それでも彼を追いかけたいと思うほどの気持ちは残っていません」
藤也と恋に落ちたときの気持ちは嘘じゃなかったと思いたい。
だからこそ、昨夜の態度が悲しくて、同時に幻滅してしまったんだ。
今でも彼を心から好きだと言う自信はない。
でもそれって私のほうも、そんな藤也を許して恋に身を滅ぼしてしまうほど、強い気持ちを抱えていたわけじゃないってことだよね。
人を好きになるって難しい。
だけど家事が苦手なことについては本気で反省している。
いつかは結婚だってしたいから、がんばって少しは克服しなくちゃ。