強引上司がいきなり婚約者!?
それから社内でも有数の凄腕営業マンらしく、ハキハキと紙に書かれた内容を読み始める。
【社内恋愛法度
兎川宗佑を甲、小枝志帆を乙とし、以下の通り契約を締結する。
一、互いを仮初めの恋人とする】
物件を売られる気分で彼の声に耳を傾けていた私は、そこで小さく手を挙げて質問した。
「あの、"互い"というのは、どなたとどなたのことでしょう」
「俺とお前だろ。他に誰がいる」
「はあ、そうですよね」
兎川さんがあまりに当然という顔で言い切るのでおとなしく頷くしかなかったけれど、それでも内心首を傾げる。
"仮初めの恋人"って……要するに、偽の恋人?
私たちが恋人同士のフリをするってこと?
理解の追いつかない私に構わず、主任は朗々と契約内容を読み上げ続ける。
【一、甲は乙に花嫁教育を施す】
「あの、花嫁教育って? 兎川さんが、私に?」
「あれだけ腹の立つことを言われたんだから、苦手な家事を克服したいだろ。でも今までだってムリだったんだから、今さらお前ひとりでがんばろうったってムリだ。だから料理も掃除も洗濯も、いつ嫁になっても恥ずかしくないくらいに俺が教育してやる」
「はあ、なるほど」