強引上司がいきなり婚約者!?
たしかに彼の言うことには一理ある。
これまでだって家事を少しも努力しなかったわけじゃないけれど、それでも上達しなかったから苦手なのだ。
なんでも卒なく熟しそうな兎川さんは、きっと家事も得意なんだろう。
彼に教えてもらえれば、ひとりでがんばるより効率もいい。
ていうか主任、やっぱり昨日の私と藤也の会話もバッチリ聞いてたのね。
なんだかんだと私を勢いで圧倒しつつ、兎川さんは先を急ぐ。
【一、乙は甲の秘密の婚約者となる】
「あの、これは? 婚約者って、ウワサでは、たしか兎川さんには……」
「たしかに俺には長く付き合った女性がいたが、それも3年前の話だ。女除けになるからとこれまで否定してこなかったが、それも最近バレかけてて不便に思っていた」
「はあ、そうなんですか」
兎川さんによれば、もともと彼に婚約者がいるという話は周りが勝手に騒ぎ立てたウワサにすぎなかったらしい。
彼はそれに便乗して告白を断る理由にしたり、気の乗らない合コンや飲み会への参加を拒否したりしてきた。
だけど実際、兎川さんの"婚約者"は影も気配もない架空の人物。
それゆえ、この頃はそのウワサを疑う人も多くなっているんだとか。