強引上司がいきなり婚約者!?
そういえば以前、好実が『兎川主任には絶対に婚約者はいない』と断言していたっけ。
ここでもまた、彼女の勘が正しかったことが証明されたわけだ。
「でも、それなら昨日の女性は?」
私は兎川さんに赤ワインを浴びせた青いワンピースの女の人を思い出す。
主任は一瞬言葉に詰まり、気まずそうに視線を逸らした。
「……聞くな。お前が俺のものになるなら二度としない」
つまり、やっぱりあの女性は正しくてかっこいい人だったのだ。
兎川さんのほうにワインをかけられる理由があったことは間違いないみたい。
主任は一度咳払いをして話を進める。
【一、ふたりの関係は公にすべからず】
「お前が俺の婚約者のフリをしてくれたら、代わりに俺がお前に家事を教える。だけど周囲には公言しない。必要に応じて、恋人がいる雰囲気を出せればいいだけだからな」
「はあ、たしかに」
恋人がいるかどうかって、何気ない行動の端々で伝わってしまうものだ。
たとえばお昼ごはんが手作りのお弁当だったり、金曜の夜は残業をしないで帰っていたり、飲み会の途中に電話がかかってきて席を立ったり、ときどき家に帰らず外泊をしてきたような雰囲気があったり……。