強引上司がいきなり婚約者!?
私はその雰囲気を演出するために彼の恋人のフリをするけど、誰に言うわけでもない。
それなら、お互いに大きなデメリットが発生することもない気がするよね……。
私ってば、兎川さんの話術にまんまとのせられてるのかな。
【一、好きな相手ができたら関係を解消する
以上のことを遵守し、兎川宗佑と小枝志帆は恋人契約を結ぶ。】
契約書の一番下には、主任のサインが入っている。
兎川さんは胸ポケットからボールペンを取り出すと、それを私の前に静かに置いた。
「これが俺の提案だ。影で恋人のフリをしてくれればいいだけだから、小枝に損はないと思う。昨日あんな場面で出くわしたのも縁だと思って、サインしてもらえないか」
腕を組み、ゆったりと背もたれに身体を預ける彼は、自信と余裕に満ち溢れた王様のような風格だ。
「あの、でも、うーん」
兎川さんに言われると簡単に納得してしまいそうになるんだけど、これでいいんだろうか。
なんだか手のひらの上で転がされているような気がする。
だけど誰かに呆れられず、ちゃんと家事を教えてもらえるのは魅力的だよね。
主任の婚約者のフリをして、秘密を口外しなければ、それで対価も支払えるわけだし。