強引上司がいきなり婚約者!?
それに、最後の条項によれば、本当に好きな相手ができればすぐにこの契約を解消できるみたいだ。
考えれば考えるほど損はないように思えてしまって、逆に頷くのが怖い。
詐欺に騙されてしまう人って、もしかしたらこういう気分なのかも。
悩みためらう私を見て、兎川さんが形のいい唇に薄く笑みを浮かべた。
椅子から背中を離し、テーブルの上に頬杖をつくと、長いまつ毛の下から見上げるようにして私をじっと見つめる。
くっきりとした目もとと高く美しい鼻梁が、彼の派手な顔立ちに色っぽい影を落とした。
「サインしてくれねえと、俺もつい口が滑るかもしれないな。淑やかで品があってキレイだって評判の小枝も、実は家事がダメダメで男にフラれたんだって」
「うっ」
「まあ俺はそんなことで幻滅したりしないし、小枝がサインさえしてくれれば、むしろ一から教育してやるんだけどな」
ニコニコと悪魔の微笑みで迫ってくる兎川さんが恐ろしくて、今すぐにでもサインをして逃げ出してしまいたい衝動に駆られる。
いやいや、でも待って。
この契約、サインしたらなおさら悪魔からは逃れられないのよ!
弱みを握られているのは兎川さんだって同じはずなのに、なぜか私ばっかり追い詰められてしまっている。