強引上司がいきなり婚約者!?
私の心の中の葛藤が手に取るように分かるのか、彼の私を見る表情はどんどんイジワルになっていった。
「ほら、サインしろ。俺のものになるまで許してやらねえぞ」
キレイな眉が弧を描き、かまぼこ型の目が不敵に笑う。
ダメ押しのひと言で、これが主任からの提案というより、ほとんど命令なんだって思い知らされた。
サインするまで本当に会議室から出してもらえなさそうな雰囲気がある。
私は眉間にシワを寄せて、【社内恋愛法度】と題された契約書を改めて見下ろした。
ああ、どうしよう。
兎川さんに逆らうのは嫌だし、とくに不利がないならサインしちゃおうかな。
もう心の中では半分以上ひれ伏しながら、それでも最後に小さな反抗を試みる。
「あの、主任。みんなには内緒にするので、どうかお許しくだサイ」
「却下です。口止料払っとかなきゃ、お互い不安だろ」
兎川さんは長い脚を優雅に組み、優しく首を振って諭すように言った。
眉をハの字に下げて、仕方ないなって顔をする。
ダメだ。
この主任を動揺させて屈伏させるなんて、絶対ムリ。
そんなことに労力を費やすより、おとなしく苦手な家事の克服に努めよう。