男の秘密 -繋がる未来-
「それで、俺の両親に挨拶したいって言ったのか」

涙で声が出ないので、頷くと、ポンポンと背中を叩かれた。

「何処まで、知っているのか分からないが、俺の所為で、家族が辛い目にあったから、俺は家族に顔向けが出来ない。
それでも良かったら、優だけで行ってくれるか?」

「行ってもいいの?」

涙で濡れ驚いた顔で、忍を見上げると、少し寂しそうな顔をしていた。

「悪いな、一人行かせて。でも、拒絶されたらと思うと、足が向かないんだ。臆病者だろ」

自嘲気味に笑う忍は、普段の自信に満ちた姿とは全く違って痛々しく思う。

「そんな事無いわ。忍さんが、自分を、責める必要は、無いの。
誰だって、大好きな人に、否定されるかも、しれないって思うと、怖いわ。
私も、忍さんに、嫌われたら、って思うと、怖いもの・・・」

熱が上がってきた所為か、体に忍の顔を見て話す力がなくなり、胸にもたれ掛かったまま、何とか気持ちを伝えようと、途切れ途切れに言葉を紡ぐが、段々と意識が混濁してきた。

優の様子が可笑しい事に気付いた忍が、直ぐに布団に戻してくれるが、見上げた忍の顔は霞んでいて殆ど見えなかった。

忍が何か言っているのを、必死に聞こうとしたが、結局は声音だけが耳に届いて内容は全く頭に入らないまま、意識を手放した。
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