伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約

二人そろって初めての外出

翌日の午後。

クレアは図書室にいた。

昨日の続きの作業は午前中で大方片付いてしまい、昼食を済ませると、やることが無くなってしまった。

朝食の時に、しばらくレッスンは休んでもいい、とライルに持ち掛けられたが、生活のリズムを崩したくなかったので、これまで通り家庭教師には来てもらうことにした。

そのレッスンは明日だ。ライルは外出しており、ジュディに何かメイドの仕事で手伝えることはないかと聞いてみたのだが、とんでもございません、と案の定断られてしまった。

レッスンを休むと言わなくて良かった、とクレアは心から思った。

最初は庭に出て、この前出来なかったハーブの観察をしていたのだが、陽射しが強くなり、ジュディに屋敷内に入るように促された。


何をしようか考えながら、次に向かったのが、図書室だ。

ライルはまだ、礼儀作法とダンスの他に、レッスンを増やそうとは言ってこない。

……だけど、語学とか教養とか、これから必要になってくるのかしら……。

今日は小説を読むのをやめて、まずクレアが手に取ったのは、外国語の教本だった。

そして、試しに中を開いてみたものの。

……はあ……だめだわ、さっぱり……。

数ページで挫折してしまった。

……こういうのは、やっぱりちゃんと先生から教わるべきよね……。

と、自分を慰めながら、次に開いたのはこの国の歴史の本だった。

クレアの母は、娘を数年間、ちゃんと町の学校へ通わせてくれたので、ある程度の読み書きや計算は出来る。だが、それは庶民が生活に困らない程度のものであったため、それ以外の詳細な知識は無いに等しかった。

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