伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
「でも、伯爵家の奥方になるということは、やっぱり家を守るのが一番の仕事ですよね……。店は閉めなければいけませんよね……?」

覚悟はしていたが、やはり寂しい。

だが、ライルの答えは予想とは全く違っていた。

「いや、やめなくていい。そのままでいいよ。君はあの店が好きなんだろう? 君の生き甲斐まで取り上げるつもりはない」

「……ですけど……」

「昔から家に居るのが女性の美徳とされているけど、時代は変わっていくんだ。女性が結婚しても仕事を持ち続ける時代が必ず来る。君が先駆けになればいい。なかなか周りには理解してもらえないかもしれないけど、俺がついてる。アンドリューも、叔父夫婦も、レディ・シルビアも、きっと……いや、絶対応援してくれる」

「……はい……!」

忘れていたが、ライルは昔の良い伝統を受け継ぎつつ、時代に合った新しい考え方が出来る人だ。そんな人が、そばにいてくれるなら--自分の夫なら、こんなに心強いことはない。



「ありがとうございます……!」

クレアは思い切り、最愛の人に抱き付いた。





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