伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
クレアの乗ってきた馬車に、二人で乗り込む。

小さな馬車なので、お互いの肩と肩が触れ合う。

「ライル様がご一緒なら、もっと大きな馬車で来れば良かったです。ごめんなさい」

「そんなことないよ。俺も仕事の帰りで、馬車を拾って帰ろうと思っていたから助かったよ、それに、これはこれで、クレアと密着出来るからいいよ」

そう言うと、ライルはクレアの頬に手を伸ばし、唇を重ねてきた。深い口付けに、いつも頭がクラクラして頬が上気する。そんなクレアを満足げに見つめて微笑むライルを、クレアは少しすねるように見上げた。

「そんなに面白いですか?いつも馬車の中でキス……」

「それは、君が可愛いからだよ。恋人や夫婦なら、皆やってることだよ」

「……」

皆というのは、言い過ぎだと思う。でも、緑の美しい瞳に見つめられてそう言われれば、そうなのかも、と思えてしまうから、不思議だ。

「……優しい魔力を持つ王子様……」

クレアはポツリと呟く。

「何だい、それは?」

「……ふふ、何でもありません……」

さっきのお返し、という風にクレアが含み笑いをする。

だが、次は満面の笑みで、ライルに言った。

「ライル様、愛してます」

「俺も、愛してるよ」







二人を乗せた馬車がゆっくりと、雪どけの街を進んでいく。


車輪が路上に残った雪を巻き上げ、キラキラと陽光に反射しながら、宙に溶けていく。




春はもうそこまで、来ている。







【完】




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