伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
背後から声が聞こえて、クレアは振り返ったが、そこに愛しい人の姿を見て、笑みを溢す。

「……ライル様……」

「さっき、通りで、うちの馬車を見付けてね、ここに来たら君の姿があったんだ」

ライルはクレアの母の墓の前に立った。

「確かお母上が亡くなったのは春だったと思うけど……」

「あ、今日は母の誕生日なんです。最近、忙しくて来れていなかったので、結婚の報告だけでもしようと思いまして」

「そうか……だったら、俺も一緒に来たら良かったね」

ライルはしゃがむと、帽子を取って胸の前に当て、静かに目を閉じた。

「ありがとうございます。ライル様に来て頂いて、母も喜んでると思います」

「お礼を言うのは俺の方だよ」

ライルは立ち上がって、クレアを優しく見つめた。

「クレアを生んでくれて、ありがとうございます、とお礼を言ったよ」

「……ライル様……」

クレアの瞳に、嬉しい涙が浮かぶ。

「また、来よう」

「はい」

腕を組んで、二人は歩き出した。


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