伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
次の日も、朝から店に出て、三日経つと、その翌日は午前中から夕方まで、レッスンを受ける。そして、翌朝からまた三日間、店に出向く。
その繰り返しで日々は過ぎていった。
ライルは、なるべく一緒に食事をしよう、と言っていたが、いつも二人の予定が合うというわけではない。
ライルも事業で忙しい身なので、クレアがまだ起きてくる前に用事で出掛けたり、または夜遅く帰ってくることもあった。
その場合は、必然的にクレアは一人で食事をすることになる。
「今日もライル様は朝早くからお出掛けなの?」
広いテーブルで一人、朝食を終えたクレアは、紅茶を入れ直してくれた執事に尋ねた。
「はい。左様でございます」
ローランドは、にこやかに返事をする。
彼はライル以外に、クレアがここに居る本当の事情を知っている唯一の人物だ。
当初、クレアはローランドに敬語で話そうとしたのだが、
『それでは他の使用人達に示しが付きません。メイド達と同じように接して下さい』
と諭されて以来、普通の話し方をするのにも少しずつ慣れてきた。
「ライル様のお仕事って、大変なの?」
「そうですね。新しい事業に取り掛かっていらっしゃいますので、今が大事な時なのでしょう。旦那様は、元々お仕事熱心なお方ですので」
「ええ、そうね……」