溺愛ドクターに求愛されて
「まあ、でも大谷はそういうの興味ないか。仲村先生がいるもんね」
ベッドメイキングをしながらからかうようにそう言われて私は苦笑いをする。
確かに私は同じ病院で働いている四歳年上の消化器外科の医師と付き合っていた。
だけど……。
「別れました」
苦笑いしながら、はっきりとそう言った私に井上さんは驚いた顔をする。
ですよね、私も驚いてます。まさかこんなことになるとは思ってなかった。
「え、だってもう付き合って長いでしょ?結婚するのかと思ってたよ」
井上さんの左手の薬指に輝いているマリッジリングが目に入って何とも言えない複雑な感情が湧き上がってくる。
私もそう思っていたから。ついさっきまでは、そう思っていた。