同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「わぁ……」
頭上に咲き乱れるのは、この間は色も薄くまだ蕾だった藤の花。
上品な紫色の花が滝のように垂れ下がる美しい光景に、しばしの間見惚れる。
この二週間ですっかり満開になったんだな。それに比べて……。
「私は……咲く前に、散っちゃったよ」
冗談めかしたひとり言のつもりで放った言葉が、思いの外自分の胸にグサッと刺さった。
見上げた先の藤色が、涙で一気に霞む。
「う、うぅっ、ぇ……っ」
とうとう我慢ができなくなった私は、ベンチに座って背中を丸め、声を殺して泣いた。
二週間前は、すぐにここまで追って来てくれたけど……今日は来てくれないんだな。
っていうか、比留川くん病人だっけ。看病頼まれてたのに、すっぽかしてきちゃった。
ああ……久々の、完全なる失恋だ。おまけに住むところまで失った。
これからどうしよう。本当に、岡山に帰ってしまう……?
私はスマホを取り出し、ある人物の電話番号にかけるかかけないか、画面を見つめてしばらく悩む。
「……勝手な私を許してね」
数分後、そう呟いた私は意を決してその番号に電話をした。
地方から出てきた私に、頼れる友達なんてほとんどいない。
だから……あなたに甘える私を許してください。
私は罪悪感に耐えながらぎゅっとスマホを握りしめ、呼び出し音が途切れるのを待った。